私たちは対話を通して、社会の多様なステークホルダーと相互理解を深め、パートナーシップを築きます。望ましい未来社会について、共にビジョンを描き、そこから具体的な課題を明らかにし、その解決のために協働します。持続可能な社会とすべての人のウェルビーイングを目指して、未来社会のデザインに挑戦します。
暮らしの「豊かさ」を表わす指標は、どこに求められるのでしょうか。第二次世界大戦後の世界では、「国内総生産GDP」がその答えであるという前提のもと、長い間、経済成長を最優先する政策が採られてきました。しかし、ある社会における人びとの暮らしや境遇は多様です。経済成長は、すべての人に等しく恩恵をもたらすわけではありません。豊かな社会とは、一人ひとりがよい暮らしや幸福・福祉(ウェルビーイング)を享受できる社会であるはずです。こうした認識とともにグローバル社会では、一人ひとりのウェルビーイングの達成を目的とする「人間開発アプローチ」が主導的な位置を占めるようになっています。
しかし人口増加が続くかぎり、一人ひとりのウェルビーイングを実現すると、環境に対する負荷もそれだけ大きくなります。2050年には、世界人口が98億人に達すると推計されています。「地球の限界」に対する適正な評価と配慮を欠けば、現世代によるウェルビーイングの追求は、将来世代から、その可能性を奪ってしまいます。大切なことは、世代間の公平性を担保しつつ、一人ひとりのウェルビーイングを実現することです。「持続可能な開発」という考え方は、このような洞察に支えられています。
私たちが直面する課題は多岐にわたります。第一に、地球温暖化、生物多様性の喪失、自然災害の激甚化に示される、環境や生活の急速な変化が挙げられます。第二に、水、エネルギー、食料などの資源へのアクセス、また南海トラフ地震やパンデミック等のリスクへの対応といった生存に直結する課題があります。第三に、平和、健康、教育、雇用、格差(貧困)、社会的公正、ダイバーシティ、金融・経済危機など、社会や経済のあり方にかかわる重要な課題が控えています。日本社会では、人口の減少と高齢化が同時に進行し、多くの地域社会が危機的な状況を迎えています。
ここで大切なことは、これらグローバルで複雑な問題群を「システム」と捉え、統合的な思考のもと解決へ導くことです。社会の多様なステークホルダー(自治体、NPO法人、市民団体、企業、自営業者など)とパートナーシップを結ぶことで、互いの情報、経験知、専門知、技術、資金などを持ち寄り、共有することが可能になります。IoT技術と人工知能(AI)に基づいて知識や情報を広く共有すれば、一人ひとりのウェルビーイングに資する新しい価値創造やイノベーションが実現されるでしょう。
私たちは持続可能な社会とすべての人のウェルビーイングを目標に、多様なステークホルダーと対話を進め、共創的なパートナーシップを確立し、未来社会を共にデザインします。